純情青春野郎爆進中!

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第十二話 SUMMER CLAP
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加藤のN 「夏まっさかりの、今日このごろ。
  横浜へ旅行していた桐村たちは、ようやく東京へと戻ってきた。
  さて、そんなある日。」
湯前 「あ、早野くん」
早野 「ども」
桐村 「へーっ めずらしいなぁ、お前が喫茶店だなんて」
早野 「まーね。電話するよりこっちの方が早いと思って」
桐村 「へ?」
早野 「明日さぁ、学校。」
桐村 「へっ?」
湯前 「二学期になると文化祭すぐでしょ?それの話し合いだって」
加藤のN 「…というわけで、桐村たちは夏休み中の学校にやってきたのだった。」

 ◎生徒ガヤ。夏休み中ゆえのハイテンション。
響 「知賀〜」
湯前 「ん? あ 響ちゃん! ひさしぶりーっおはよー」
響 「おはよー。 あ、知賀ちょっとやけたんじゃない?」
湯前 「え そう?」
響 「そーだって。あたしは全然やけなくてねーっ… でもまあ それはそれで」
響による男の声 「あの娘…きっと体が弱いんだな。よし、オレが守る!」
響 「とかいうことに…」
湯前 「…あいかわらずプラス思考ね、あんたって人は…」
響 「そんなことないってー。 あ、ほら先生きたよ」
 ◎ガヤ黙る。
高井先生 「はーい皆さんおはようございまーす」
生徒一同 「おはようございまーす」
高井先生 「う〜ん 取って付けたようなお返事ありがとう。
  さて 今日わざわざ集まってもらったのにはワケがあります」
間 「そりゃそうだ」
高井先生 「実はですねー、なんとですねー。」
鳥居 (小声で)「そんな もったいぶらなくても…」
加藤 (小声で)「連絡網まわしたんだから、みんな知ってるはずだろうに」
桐村 (小声で)「まぁ、そのへんが高井先生なんだけどな」
高井先生 「何か言った?」
桐村 「あ、いえ」
高井先生 「そう? …で、実は今日は、文化祭についてやりたいと思うんですよっ!」
生徒一同 「ぶんかさい〜っ!?」(わざとらしく)
高井先生 「そうっ! 九月になると意外とすぐにやってくる文化祭…っ!
  この学校はおろか、他校の人や保護者の方、
  果ては北は北海道 南は九州まで多くの方が…!」
桐村 (小声で)「んな来るかぁ?」
加藤 (小声で)「あの江実大学とかならともかく、うちじゃぁなー…」
鳥居 (小声で)「都内でさえあやしいもんだ」
高井先生 「そこの三人、正座したい?」
そこの三人 「結構ですっ!」
鳥居 (小声で)「こわ〜…」
加藤 (小声で)「あんなこと言うもんじゃないな」
桐村 (小声で)「高井先生は、文化祭に命かけてるからな〜」
高井先生 「文化祭は絶対成功させるのよっ!いいわね!?」
桐村 (小声で)「…ほら」

マスター 「命かけてますからねー、新メニュー考えるのには」
本城 「…で…命をかけた新メニューってのが…」
日笠 「…これですか…」
高須 「ええ。うぐいすあんを中華まんの皮で包んだ…」
本城 「…『うぐいすまん』、ですか?」
マスター 「おーっ。鋭いね、本城さん。ズバリ賞でもあげましょうか?」
日笠 「鋭いって… そのまんまだと思うんですけど」
本城 「まぁ、食べてみないとわからないから… うわぁっ!?」
高須 「どーしました?」
本城 「こっ…これ…」
日笠 「つめたいのーっ!?これ!?」
マスター 「ええ」
本城 「サラッと言うなぁ…」
高須 「ま、僕もまだ食べてないんで、ひとついただきますね」
高須・本城・日笠 「いただきま〜す」
マスター 「いかがです?」
 ◎ちょい間。
三人 「これはぁぁ!?」
本城 「…んー…例えるならばうぐいすパンのような…」
日笠 「冷たい皮がなんとも言えず…」
高須 「もとは同じ小麦粉とはいえ… ここまでいきますか」
マスター 「…そこまでいったか この料理」
本城 「そーですねー… このうぐいすあんのおいしさを、この皮が調和しているというか…」
マスター 「うわ〜… 貴重なご意見ありがとうございます」
本城 「あ…すいません。ちょっと言いすぎましたね」
マスター 「いえいえ。はっきり言ってもらった方が、こっちとしても助かりますよ」
高須 「うーん… じゃあ、どんなのがいいですかね、秋の向けての新メニューは」
日笠 「はいっ! スカイパフェを中に入れた、『スカイパフェまん』とか…」
高須 「それ… 桐村くんと発想同じです…」
日笠 「あ…そう…」
一同 「う〜ん…」

生徒一同 「う〜ん…」
高井先生 「何かいいアイデアないかしらねー、うちのクラスのお店…」
響 「先生、ちょっと思ったんですけど、
  こんな八月のあたまに学校くる必要はなかったんじゃないですか?
  まだ四週間ぐらいあるんですよ?夏休み」
高井先生 「あまーい。四週間なんてあっという間よ?それに『善は急げ』ってね」
間 「四週間はあっという間って… そのぐらいしか生きれない生き物もいるんですけど?」
高井先生 「ううん(否定)。彼らは、その短い寿命をせいいっぱい生きてるの。
  だから、それは私たちにとってはあっという間かも知れないけど、彼らにとっては違うの。
  彼らにとっては、その時間は貴重で、大切な時間。あっという間なんかじゃないのよ」
生徒一同 「お〜っ」
湯前 「高井先生、かっこい〜」
早野 「うまくまるめこまれたっていう気もするけどね」
加藤 「しっつも〜ん。うちのクラスが店を出すって、いつの間に決まったんですか?」
高井先生 「自動的に」
加藤 「へ?」
高井先生 「意見を求めるまでもなくわかってたし…私としてやりたかったし」
加藤 「そーゆーのを自己中っていうんじゃ…」
高井先生 「あら…じゃあ聞いてみる?文化祭は店を出した方がいいって人」
生徒一同 「は〜い」
高井先生 「ん。満場一致。」
加藤 「…文句ないです」
高井先生 「だったら、何のお店にするかきめてね」
加藤 「うーん… 梅酒ラッパ飲み屋とか」
湯前 「…なんか、どっかで聞いたわね、それ…」
桐村 「焼きとうもろこし…ってのは、ちょっとありがちですかね」
間 「『焼きコーン屋』なんてどう?」
鳥居 「『焼きコーン屋』?なんだそりゃ」
間 「ひとつぶひとつぶを焼くんだ。焼きとうもろこしやポップコーンとは違った味わいがある」
湯前 「なににしよっか〜」
鳥居 「そーだなー」
間 「聞けって」
早野 「やっぱ、ありがちなのじゃない方がいいかなー」
響 「ありがちなのっていうと…例えば?」
桐村 「んー… アイス屋とか雑貨屋とか駄菓子屋とか…」
湯前 「金魚すくいとかわたあめとかラムネとかかき氷とか…」
桐村・響 「それは縁日!」
湯前 「はっはっは。 でも、ありそうでしょ?」
響 「そーかなー…」

マスター 「わたあめなんてどーかな」
高須 「マスター…そりゃ縁日でしょう」
本城 「喫茶店でわたあめってのは… 考えて見ると、こわいですよ」
マスター 「あってないところがいいってね。『柿の種にチョコ』ってのと同じようなもんですよ」
高須 「あ〜… ありますねぇ」
本城 「あ、ところでそろそろ二時半じゃ?」
高須 「あ そうですね。 じゃあ、ドアのところのやつ、『OPEN』にしときますね」
マスター 「あ、ありがとう」
高須 (遠くで)「うわーっ!?」
本城 「ん?」
青柳 「こんにちは〜」
マスター 「ああ、いらっしゃい」
高須 (遠くから、だんだん近づいて)
  「あのなぁ…ドアの前でボーッと立ってるんじゃないよっ!」
青柳 「開くのまってたのよ。あー暑かったー。あ なんかフラフラする」
高須 「あ おい 大丈夫か? 別に、入っててもよかったんだけどね」
青柳 「そうなら言ってよ〜。 あれ?日笠さんいないの?今日」
本城 「さっき帰ったよ。仕事じゃないかな?」
青柳 「仕事?何のですか?」
本城 「なんだっけ… 前は保母さんやってたみたいだけど、今はどうだろ?」
高須 「えっと、じゃあご注文は」
青柳 「コーヒー代。じゃなくて… うーん… クレープってないっけ、ここ」
高須 「ないって」
マスター 「クレープ? …それだ!」
本城 「え?」
高須 「マスター、クレープなんて作れるんですか?」
マスター 「ふつー作れるでしょ。それに昔、クレープ屋のバイトをやったことがあるんでね」
高須 「へ〜」
マスター 「じゃあ、クレープだね? ちょっとまってな」
青柳 「え? …どーゆーこと?」
高須 「うーん… 新メニューのアイデアを出したってことじゃない?」
青柳 「えぇ? …あたしが?」
高須 「そっ。」
青柳 「はぁ…」

間 「人類初の火星到達!」
桐村 「スカイパフェの実演販売!
鳥居 「おっ… ちゃんと『販売』って言ってるな」
早野 「論文!」
湯前 「なんか話してることが違ってない!?」
響 「たしかにね」
鳥居 「なにがいーかなー…。家帰ったら部屋そうじしなきゃいけないからなー、早くしないと」
桐村 「そうじ?がんばってね」
鳥居 「お前もだ! 第一、部屋のいらないもの処分しようって言ったのはお前だろっ!」
桐村 「はっはっは」
湯前 「あ… それよ!」
桐村・鳥居 「え?」
湯前 「みんなでいらないものをもってきて、それを売るのよ!」
早野 「なるほど… リサイクルになるし、かせいだ金は寄付するわけだし… そりゃいいな」
響 「じゃあ皆さん、それでいいですか?」
生徒全員 「異議なーしっ!」
 ◎拍手。
桐村 「おーっ。なぜ拍手?」
湯前 「お店が決まったってことで、そのうれしいのを表したかったんじゃない?」

湯前のN 「その拍手は、夏のしずかな校舎中にひびきわたりました。
  そして、夏が終わり…秋が来ます!」

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