純情青春野郎爆進中!

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第十三話 それぞれの秋
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桐村のN 「スポーツの秋、芸術の秋、食欲の秋。秋はいろいろあるけれど…
  オレにとっての秋は?」

桐村 「とーりーいっ! 鳥居っ!」
鳥居 「…んーっ… (起きる) あ〜ぁ(欠伸)。 あぁ…桐村おはよ」
桐村 「“おはよ”って…」
鳥居 「わりーわりー。昨日遅かったんだよ。でもおまえがオレより早く起きるなんて珍しいな」
桐村 「まぁね。やってみたいことがあったんで」
鳥居 「やってみたいこと?  ん…このにおいは…
  ……みそしる??」
桐村 「そーだよ」
鳥居 「あーっおまえ朝飯つくったな・」
桐村 「うん」
鳥居 「『うん』じゃなーいっ!」
桐村 「まぁまぁ。(シブく)オレが御影屋で何もしてないとでも思ってるのか?」
鳥居 「はっ… そうか…御影屋は喫茶店… 料理を習うチャンスはいくらでもある…
  もしそれで桐村の料理が食べれるものだったら…… オレがラクできるっ!
  よし。いただこうか」

 ◎生徒ガヤ。
湯前 「 で… 今日の朝はごはんだけだったわけね」
鳥居 「そーゆーこと…。 お前なぁっ!みそ汁作るんだったらだし使えっ!」
桐村 「いやぁははは」
鳥居 「笑うなっ!」
湯前 「でもさ、桐村くん、うちで料理の勉強なんてやったことあったっけ?」
桐村 「一度も」
鳥居 「おいっ!」
桐村 「あーでも言わないと食べないかなーと思って」
鳥居 「いつかオレが料理作らないでもすむ日ってのはこないのか?」
桐村 「出前」
鳥居 「違う!」
加藤 「あーそっかぁ、桐村と鳥居って同居してるんだっけ」
桐村 「そっ」
加藤 「なんで同居してんの?」
桐村 「うっ…」
湯前 「ところでさぁ! 文化祭近いよねー」
加藤 「え? いつだっけ?」
湯前 「たしか… 9月28と29だったかな? 28日は生徒の日で、29日は一般の人の日」
加藤 「あと2週間ぐらいか。あんまり時間ないなぁ」
響 (遠くから)「知賀〜、お客様だけど〜」
湯前 「え? ……あ、青柳さん」
青柳 「おっはよー」
湯前 「あ おはようございます」
 ◎生徒たち、「青柳先輩だ」「おー」などと言い出す。
桐村 (小声で)「なんだぁ?なんでこんなにみんなが反応するんだ?」
鳥居 (小声で)「お前知らないの?青柳さんってめちゃくちゃ人気あるんだぞ」
桐村 (小声で)「そーだったんか…」
湯前 「で…どうしたんですか青柳さん? 2年の教室に来るなんて珍しいですけど」
青柳 「あのさ、昨日御影屋行ったとき、あたし忘れものしなかった?」
湯前 「忘れもの?」
桐村 「あったっけ?」
鳥居 「大きい茶ぶーとーですか?」
青柳 「そうそう。それ」
桐村 「…なぜ知ってる、鳥居…・」
鳥居 「昨日ちょっと顔みせたときにチラッとね。」
湯前 「あたしなんか一日中いても気付かなかったのに…」
青柳 「でね、あれ、中身 文化祭のプログラムの原稿だからさ、あしたもってきてほしいのよ。
  お願いできるかな」
湯前 「あ、わかりました」
青柳 「ごめんね、本当は今日直接行ければいいんだけど、今日はちょっと無理なんで」
湯前 「まかせて下さいっ♪」

高須 「♪〜(鼻歌)。 ふぅ。マスター、こっちの方のそうじ終わりましたよー」
マスター (遠くから)「あぁ、ありがとう高須くん。んじゃぁ少し休んでていいよ」
高須 「はーい。 ふ〜っ」
マスター (遠くからだんだん近付いて)「はい高須くん、コーヒーどうぞ」
高須 「あ、すいません。  桐村くんたち、何時ぐらいに来ますかねぇ?」
マスター 「おいおい。それはこっちがききたいところだよ」
高須 「あそうか。文化祭間近だから、帰るのが遅くなるんでしたね」
マスター 「3年生はそういうことはないのかい?」
高須 「ええ。“3年だから”ってのが一番の理由でしょうね。
  僕みたいにバイトしてる人も多いでしょうけど」
マスター 「高須くんはどうするんだい? 進学?それとも就職?」
高須 「まだ決めてないんですよ」
マスター 「こらこらっ」
高須 「なーんて。冗談ですよ。一応 大学行くつもりです」
マスター 「大学か。ねらってるところ、あるんでしょ?」
高須 「ええ、まぁ」
マスター 「ここのバイトはどうするの?」
高須 「うーん……」
 ◎ドア開く(きっさ)
桐村 「どーもー」
高須 「あ、桐村くん」
マスター 「あれ?少年、知賀は?」
桐村 「まだ残ってるみたいです。響と一緒に」
高須 「ひびき? …あぁ、あの学級委員の娘か」
桐村 「えぇ」
 ◎ドア開く(きっさ)
桐村 「あ いらっしゃいませーっ。ご注文は」
客3 「えっと…… コーヒーひとつ。あ エスプレッソで。
  それと…… あ、クレープなんてあるんですか」
桐村 「ええっ。秋からの新メニューなんですよ」
客3 「じゃあ、チョコクレープひとつ」
桐村 「わかりました。マスターっ、エスプレッソ… でしたっけ?」
客3 「えぇ」
桐村 「…ひとつと、チョコクレープひとつ っ」
マスター 「あいよーっ。 それはいいけど少年、今のうちに着がえちゃいな」
桐村 「は〜い」

三内先生 「ってわけでだな、それを伝えてほしいんだ」
蛍原 「はぁ… でも三内先生」
三内先生 「なんだ蛍原?」
蛍原 「味覚発見部って、これだけでしたっけ?間くんと…」
間 「京野さんと…」
京野 「蛍原さん。3人しかいませんね。高須先輩と黒越先輩とうるうちゃんは…」
三内先生 「うるうちゃん?」
京野 「小音さん! 先生、部員の名前ぐらい覚えて下さいよー。ほんっとにも〜…」
三内先生 「あいにくだがものおぼえのいい方じゃないんでな」
間 「それはいいっすけど、高須さんと黒越と小音さんはどうしたんすか?」
三内先生 「…フッ… 今日集まれって言い忘れた」
一同(蛍・間・京) 「こら!」
三内先生 「まぁまぁまぁまぁ」
蛍原 「どーりで…。 高須が部活サボるわけないもんな」
間 「あ、黒越ならたぶんまだ学校にいますよ。
  文化祭のプログラムのさし絵書いてるはずっす」
三内先生 「そーか。まぁとにかく、3人に伝えといてくれ。
  (かっこつけて)味覚発見部は、文化祭では例の物を展示する、と…」
京野 (小声で)「誰かとめてあげましょうよ」
蛍原 (小声で)「いや… もう手おくれだね」
間 (小声で)「ほっといてあげたほうが先生のためっすね」

高須 「そういえば、店の外に文化祭のポスターはってありましたね」
マスター 「そう。昨日知賀が『はれーっ!』って騒いだもんで」
湯前 「さわいでないわよ」
マスター 「あれ? 知賀、いつ帰ってきたんだ?」
湯前 「今さっき。 へんなこと言わないでよ〜」
マスター 「さわいでたと思うが」
桐村 「コーヒーおかわりいかがですか?」
客3 「あぁ、いただきます。すいません。  文化祭、ですか」
桐村 「え? あ、ええ。29日にあるんです。ぜひいらして下さいよ」
客3 「私ですか? んーっ…行きたいのはやまやまですけど、
  あいにくこのへんに住んでるわけじゃないもんで…
  まぁ、遠いってほどじゃないですけどね」
湯前 「…ふ〜ん…」
高須 「? どうしたの、知賀ちゃん」
湯前 「あ いえ… 桐村くんも、ずいぶんここのバイトに慣れたんだなーっと思って…」
高須 「あ〜、なるほどね。お客さんと気軽に話せるようになったし」
マスター 「『空腹の王子』、って知ってるかい?」
高須 「え?」
マスター 「そういう本でね、そこにはこう書いてあるんだ。
  『店員が話しかけてくる店はよい店とは限らない。接触を避けたい人もいるのだ』って」
高須 「えーっ… そういうもんですか?」
湯前 「お父さんは、どう思ってるの?」
マスター 「人によるだろうね、店員との接触をどう感じるかは。
  でも話さないよりは話した方がいいと思うけどね」
 ◎ドア開く。
鳥居 「こんちわ〜」
湯前 「あ、鳥居くん。いらっしゃいませー」
客3 「とりい…?」
桐村 「あ鳥居、今日の夕食オレがつくろっか?」
鳥居 「いい(否定)! せめて、もーちょい上手くなってからにしてくれ」
客3 (ブツブツと)「いや…しかし… いや でも…」
桐村 「ん… どうしたんですか?」
客3 「…あの… あなた、鳥居さんでしたよね」
鳥居 「え? あ、そうですけど」
客3 「…きりむらって人、ごぞんじですか?」

桐村のN 「――オレにとっては、再会の秋――。」

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