純情青春野郎爆進中!

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第十四話 九月の雨
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京野のN 「秋。秋と言えば文化祭。うちの学校でも」
湯前 「文化祭近いよねー」
客3 「文化祭、ですか」
京野のN 「そんな中、御影屋では」
客3 「…あの… あなた、鳥居さんでしたよね」
鳥居 「え? あ、そうですけど」
客3 「…きりむらって人、ごぞんじですか?」
京野のN 「…秋が出会いの季節、なんて… 誰が決めたんだろ?」

桐村 「き…きりむら…?」
客3 「きりむら。 きりむらなぎさっていうんですけど」
鳥居 「! 狭山さん!?」
桐村 「うわぁっ… ったく鳥居、なんだよいきなり…
  …え? 今なんつった? …は ざ や ま?」
鳥居 「そうだよ! オレんちのとなりに住んでた、狭山さん!」
桐村 「え――っ!?」
客3(狭山) 「そっ。やっぱり鳥居くんなのね。 じゃあ、この人が桐村くん?」
鳥居 「そーですよー! あーっもう2年近くも会ってませんでしたねー」
狭山 「どこ行ったかと思ってたら、 …もーびっくりよ…
  あ、自己紹介が遅れましたね。私は狭山陸月。大学1年です」
高須 「あ 高須 聖です。高3で…」
狭山 「ソフトボールってします?」
高須 「え? いえ… 授業で少々…ぐらいですけど」
湯前 「湯前知賀、高2です」
狭山 「ソフトボールは?」
湯前 「はぁ… あんまりしませんけど… なんでです?」
桐村 「狭山さんはねー、なんか知らないけどソフトボールにこだわるんだよ」
狭山 「やっぱり時代はソフトでしょ。白い球に青春をかけて…! く〜っ燃えるーっ!」
鳥居 「はいはい。 あ マスターどうぞ」
マスター 「あぁはいはい。えっと…湯前利彦です。
  知賀の親で… 一応、この『御影屋』の経営者です」
狭山「皆さんは、みんな同じ高校ですか?」
湯前 「そうです。桐村くんも鳥居くんも」
鳥居 (ボソッと)「マスターも」
桐・湯・高・マス 「ちがーう!」
狭山 「ははは… あ そうそう。
  2人とも、たまには戻らない?心配してるよ? 手紙だけじゃダメよ…
  …あ。ひょっとして… 言わない方がよかった?」
桐村 「いえ… 言っちゃっていいです」
狭山 「つまり、この人たちはまだ知らないってことなのね」
高須 「え?」
桐村 「かまいません。言って下さい」
鳥居 「おい、桐村…」
桐村 「いいだろ? いつかは言わなきゃならないんだし」
狭山 「だめね。 まだ言うべきじゃない。
  それに、言うんなら自分で言うこと。ひとまかせじゃダメ。いいわね?
  じゃ、そろそろ帰るわね。あたしは国分寺に住んでるから、何かあったら来るといいわ」
鳥居 「国分寺ですか?」
狭山 「そう。大学のために、あたしも上京したの。今日はサークルの関係でここにね。
  あ、お代です。チョコクレープとエスプレッソ、おいしかったですよ」
マスター 「あ、どうもっ」
狭山 「文化祭はできれば行くと思うんで、またその時にでも会いましょう。
  じゃ、失礼しまーす」
湯前 「あ、ありがとうございましたー」
 ◎ドア閉まる(きっさ)。
 ◎しばし、沈黙。
マスター 「ふぅ…(ためいき)さて、食器洗わないとね」
桐村 「…あの…」
高須 「ストップ」
桐村 「え?」
高須 「『言わなきゃならないこと』なら、まだ言わなくていい。
  自分から言おうと思ったときに言ってほしいな」
桐村 「高須さん…」
高須 「…と、そういうことが言いたかったんじゃないかな、さっきの… 狭山さんは」
桐村 「すいません…」
高須 「僕にあやまっても仕方ないって」
鳥居 「あ、マスター。 カレーライスもらえますー?」
マスター 「あいよーっ。 鳥居くんは辛さはアレだったね」
鳥居 「ええ。中辛と辛口を2:1の割合で」
湯前 「こだわるぅ」
桐村 「あ、おまえ ここで夕食すますの?」
鳥居 「ま、たまにはね」
桐村 「ずるいなぁ… あ、マスター!料理教えて下さい!」
マスター 「はい!? なんだいいきなり?」
桐村 「鳥居をぎゃふんと言わせるためにもーっ! どーすればいいですかね」
マスター 「教えてって言っても…。うーん… 料理… 料理… 料理は…  心だっ!」
桐村 「どーしろって言うんですかぁ!」

 ◎雨。
桐村 「はーっぬれたぬれたー」
鳥居 「いきなり雨はないよなー。 あ、テレビつけて!」
桐村 「なんかやってる?」
鳥居 「『アンドリーニのTrue the rain』。第2回は今日だ たしか。
  野球のせいでのびにのびたんだよ」
桐村 「何チャン?」
鳥居 「8。 …やってるやってる。 ちょうどはじまったとこか」
桐村 「ふ〜。 しっかし今日はおどろいたなー」
鳥居 「あぁ。まさか狭山さんと会うなんて」
桐村 「再会の秋、ってやつかな」
鳥居 「そんなこと言うっけ?」
桐村 「まぁまぁ。 ま、あこがれの人と再会できて、鳥居くんは大喜びですねぇ」
鳥居 「なんのことやら」
桐村 「しらばっくれる気か?
  まぁとにかくだ。 狭山さんも言ってたけど…」
鳥居 「あぁ。いつか、一度は帰らないとな」
桐村 「…いつか、な」
鳥居 「…まだそういう気になれないか? でも、それは東京に来たときから…
  いや。決めたときからわかってたことだろ?
  いつか、一度は帰らなきゃならないって」
桐村 「そりゃそうだけど… 悪い。まだそういう気持ちになれないんだ」
鳥居 「無理にとは言わないさ。そういう気になったら、な」
桐村 「悪い」

マスター 「ごちそうさまー」
湯前 「ごちそうさまー」
マスター 「うん… 今日のリゾットは美味かったな」
湯前 「やっぱり? やっぱり!?」
マスター 「あぁ。ずいぶん上達したじゃないか」
湯前 「へっへ〜ん♪ じゃ、お片付け〜っと」
マスター 「ふぅ… しかし、高須くんも大きくなったなぁ」
湯前 「(少〜し遠くから)え? (近くへ)どうしたのお父さん。いきなり」
マスター 「今日のことさ。あれだけ言える人ってのはそうはいないよ。
  ここに初めて来たときは、まだこんなに小さかったのに」
湯前 「…お父さん? 高須さん、身長そんなに伸びてないんだけど…?
  そーいう話するようになったんじゃあ、お父さんも… 歳よね」
マスター 「うるさいっ! …知賀はどう思った?」
湯前 「え?」
マスター 「今日のこと」
湯前 「…う〜ん…」
マスター 「気になるか?やっぱり」
湯前 「そりゃそうだけど…
  でも、やっぱり話そうって思うまでは話さない方がいいんだと思う。
  『友達だからかくし事なし』って言う人もいるけど、あたしはそうは思わないなぁ。
  知らないことがあったってなくったって、友達は友達だし、
  わかり合う事もできるんだと思うなぁ」
マスター 「…なるほどね」
湯前 「じゃ、先にお皿洗っとくね」
マスター 「あぁ…。
  (溜め息)…かすみ…。 こっちは心配いらないみたいだぞ……」

 ◎ドアベル。
高須 「はーい」
 ◎ドア開く。
蛍原 「よっ」
高須 「蛍原? どーしたんだ、こんな時間に」
蛍原 「ここらで買い物してたら遅くなったんで」
高須 「…それでうちくるかぁ!?」
蛍原 「いやぁ、それと他に言うことがあるもんだから」
高須 「言うこと? …まぁいいか。 あがるか?」
蛍原 「いーのか? 悪いだろ」
高須 「…とか言ってるけど… 左手に持ってるのはなんだ」
蛍原 「あ これ? せっかく行くんだからと思ってな。少々みやげなど」
高須 「…はじめっからあがるつもりじゃんか」

蛍原 「ビールあるけど。飲むか?」
高須 「何を言うか高校生」
蛍原 「そんなの守ってるやつなんて誰もいないだろーが」
高須 「そうだけどなぁ、平気でビール飲むようになったら有野と同じだろうが」
蛍原 「あぁ…優介はよく飲むからなぁ。しかも強い」
高須 「で? オレに言うことってのは?」
蛍原 「あぁそぅそぅ。 文化祭さ、オレらは例のもの展示だってさ」
高須 「"オレら"って… 味覚発見部ってこと?」
蛍原 「そう。 あぁ、それともうひとつ。これ」
高須 「なんだよこれ? …ふん… ふんふん… …えっ・」
蛍原 「そーゆーことだってさ」
高須 「ちょ…ちょっとまて! つまりこれは…」
蛍原 「文化祭に来る予定の有名人に、おまえが食事作って食べてもらうってこと」
高須 「なぜオレ!?」
蛍原 「部長だからだろ? それにお前の料理には定評がある」
高須 「…有名人ってだれ?」
蛍原 「さぁ? オレもチラッと聞いただけだから」
高須 「ふーん」
蛍原 「さー飲むか!」
高須 「あ こら! 酔ったから今日泊まってく、とかナシだぞ!」
蛍原 「あー、そーゆー手もあるか」
高須 「おいっ!」

京野のN 「九月の雨――。 同じ雨のもとに、様々な思いがあった――。」

湯前 「響ちゃーん。女子の方は何個集まってる?」
響 「えっとね…42個。みんないろいろ持ってきてるのねー… 早野くん、男子はどう?」
早野 「53個… あ おい だれだこーゆーマニアックなのもってきてるのは」
加藤 「ん? あ それ オレ」
間 「これは…っ! バルザクーンの中でも一番マニアックなD=バルザクーン!」
桐村「はい?」
加藤 「簡単に言うとプラモデル」
桐村 「なるほど」
加藤 「うちにあるのに弟が買ってきちゃったもんでね」
湯前 「弟? へーっ加藤くん 弟いたんだ」
加藤 「まぁ一応。 なまいきなやつでねぇ」
間 「いやーいい弟じゃんか。お前にそっくりで」
響 「ってことは… 同じように童顔」
加藤 「なんでだ! 誰が童顔だっての!」
男性陣 「おまえだ」
女性陣 「きみだよ」
加藤 「みんなで言うかぁ?」
桐村 「でも、中1の夏ぐらいまで小学生料金で電車乗ってたって感じはするよな」
加藤 「いや、中3の春まで」
一同 「おい!」「こら!」「ずっる〜い」など。
高井先生 「ほらちょっとそこ! さぼらないで仕事しなさい!残ってる意味ないでしょ!」
間 (小声で)「残らされてるって言った方が…」
高井先生 「何か言った?」
間 「いえいえっ!」
高井先生 「文化祭はあと5日! 商品整理、しっかりやっとかないと」
湯前 「あ先生。 先生はお店にだすもの何かあるんですか?」
高井先生 「…実はねぇ… この前部屋の整理したら…」
桐村 「…いやな予感…」
高井先生 「このぐらいでてきちゃって」
桐村 「…な…何個あるんですか…?」
高井先生「50コぐらいかしら」
加藤 (ボソッと)「オニ」
間 (ボソッと)「アクマ」
高井先生 「さーっ片付けちゃって」
加藤・間 「オレらを!?」(おびえて)
高井先生 「…されたいならいいけどね」
桐村 「そーいえば、鳥居はどこ行ったんだ?」
湯前 「鳥居くんなら帰ってるけど?」
響 「っていうか… 残ってないよ」
間 「先生に捕まる前にうま〜く逃げたんだ」
高井先生 「…し・ご・と」
間 「あーっ やりますーっ!」

鳥居 「…というわけです」
狭山 「なるほどね… 桐村くんがまだ…か」
鳥居 「やっぱりあいつ、帰りにくいんですよ。昔 言ってましたから。
  『ここで家に帰ったら、自分に負けたことになる』って」
狭山 「『理由だったはずの理由は理由とならなくなった。
  でもそれだけの理由で来たわけじゃない。』
  …それを証明したいのよ、桐村くんは」
鳥居 「…じゃあ、どうすれば…」
狭山 (さえぎって)「ストップ。今日はここまで」
鳥居 「え?」
狭山 「文化祭近いんでしょ?今はそれだけ考えるの。
  成功するものも成功しなくなっちゃうわよ。
  ひといきついたらまた来るといいわ。いくらでも相談にのってあげる…  と、
  ごめんね。もう鳥居くんも子供じゃないっていうのに、あたしったら」
鳥居 「いえ… 僕ん中では、狭山さんはいつもいつでも『頼れるお姉さん』ですから」
狭山 「ありがと。 さ、じゃ今日は帰りなさい。 文化祭には行くから、がんばるのよ」
鳥居 「わかりました! じゃあ、5日後に会いましょう!」

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