純情青春野郎爆進中!

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第十七話 見つめる写真
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鳥居 「ってわけだから、オレはハンズに行くけど… お前は?」
桐村 「オレ?ん〜…いいや。今日はうちにいる」
鳥居 「え… いいのか?」
桐村 「ああ」
鳥居 「買う時間あるのか?」
桐村 「え? ああ、それはもう買ってある」
鳥居 「あ なんだ。じゃいっか。ここんとこお前忙しかったもんな。
  なにか、ご注文は?」
桐村 「んー… ああ、エンゼルフィッシュのエサなくなりそうだから買ってきて」
鳥居 「了解っ。んじゃ、行ってくるわ」
桐村 「言ってらっしゃ〜い」
鳥居 「…っと。 そうだ桐村、言い忘れてたけど…」
桐村 「ん?」
鳥居 「…近いうち、狭山さんち行くぞ」
桐村 「…そうだな」
 ◎ドア閉まる。

 ◎BGM:高須さんテーマ曲「Takasu's room」。
高須 「ふーっ、数Bはこれで終わりっ…と。 ちょっとブレイクしよっ。
  えーっとキットカットあったかなーっと。
  ――ん? 何だこれ…
  …あぁ、あいつの写真か。あーっなっつかしーなー。
  あいつは… 今、どこにいるんだろうなぁ…。」

青柳のN 「二週間ほど前。」
湯前 「えーっ!? 高須さん、ここのバイトやめちゃうんですかぁ!?」
高須 「うん… 今月いっぱいでね」
湯前 「なっ…なんでですかぁ!?」
日笠 「高須くんも受験だしねぇ。バイトしながら受験勉強ってのはね〜」
桐村 「なんか… 冷静ですねぇ」
湯前 「そんなぁ… やめないで下さいよ、高須さん〜っ!」
マスター 「こら、知賀」
高須 「ん、気持ちはうれしいんだけど…」
本城 「でも、受験だからバイトやめるんでしょ?それにしてはずいぶん遅くないかい?」
高須 「ずっと悩んでたんですよ…。バイト、やめたくなかったんで…」
湯前 「…」
マスター 「そっ…か。」
高須 「あ、でも、2月になって結果でたら、またやろうと思ってるんですけど」
マスター 「あ、そうなんだ。そっか… 最後に旅行でも、とか思ってたけど…」
高須 「あーいいですねぇ。また『みなと』にでも… ってそりゃ無理ですって」
マスター 「そりゃそうだ。じゃせめて送別会でもさせてくれるかい?」
高須 「送別会って… だって」
マスター 「いやぁ、3ヶ月は短いようでも長いよ」
高須 「そう…ですか。わかりました」
マスター 「それに、そういうのが好きな人ばっかりだしね」
本城 「何の話かな?」
日笠 「当然参加するけどね」
高須 「…ははっ… そうですね」

湯前 「…」
桐村 「ん? どーしたん?」
湯前 「…高須さん、ずっと悩んでたんだね…」
桐村 「…うん…」
湯前 「…あたし、全然そんなこと考えてなかった…」
桐村 「…」
湯前 「ただ自分の都合だけで、『やめないでほしい』なんて…」
桐村 「…本当にやめないでほしいーって思ってたんでしょ?
  一生懸命な時ほど人のことは考えられない、って誰か言ってたよ」
湯前 「桐村くん…」
マスター (遠くから)「おーい、知賀、少年〜」
桐村 「あ、は〜いっ。
  (だんだん遠くへ)あれマスター、コーヒー切れてますよ」
湯前 「…ありがとう、桐村くん…」

青柳のN 「そして、当日となった」
マスター 「じゃ、そろそろはじめようか」
湯前 「えーっと、第一回っ御影屋送別会〜っ! 二回目はないでほしいけどね」
マスター 「…んー… これ二回目だけどね」
湯前 「えっ? 誰?」
本城 「ああ、利行さんか」
高須 「誰ですかそれ?」
本城 「マスターの弟さん」
鳥居 「弟さん? いたんですか?」
マスター 「まぁ…ね。まいいさ。さ、司会進行して」
湯前 「あ はいはい。 えーっと… あれ?本城さん、…日笠さんは?」
本城 「え? ああ、日笠さん仕事が入っちゃったんだって」
桐村 「…結局、何の仕事してるんですか?」
本城 「保育士、だってさ」
桐村 「ほいくし?」
マスター 「…元保母さんって、そういう意味か…」
湯前 「じゃあ、日笠さん来れないのかぁ…」
本城 「あぁ、大丈夫、ちゃんと(急に司会口調)電報を頂いております」
マスター 「で…電報?」
本城 「高須くんへ。
  バイトを始めて3年。少しの間とはいえ、会えなくなるのは寂しいものです。
  3年前は、マスターも30代だし、私も独身でした。
  せめて、私の子供の顔を見るまではやめないで下さい。 日笠夏子」
高須 「日笠さん…」
桐村 「結婚してたんですね」
本城 「そだよ。 はい高須くん」
高須 「あ どうも」
桐村 「本城さんは?」
本城 「…もうすぐ三十路… いまだ独身…」
湯前 (小声で)「高井先生と結婚すればいいのに」
桐村 (小声で)「ねぇ?」
本城 「…お二人さん?何か言ったかな?」
桐村・湯前 「あぁ、いえいえ」
マスター 「ほら、司会」
湯前 「はーい。
  えーっと、それで、あたしたちから贈り物があります」
高須 「え?」
湯前 「あたしとお父さんと桐村くんと鳥居くんで、ひとつずつ」
高須 「そんな… 悪いって」
マスター 「いや、大丈夫。 ちょうど駅前で安く売ってたんでね」
湯前 「あ、あたしも」
鳥居 「オレも」
桐村 「同じく。 …なんか、やな予感するんだけど」
高須 「これですか… あけていいですか?」
マスター 「どうぞ」
高須 「えーっと… マスターのは、置時計」
桐村・鳥居・湯前 「なぬっ!?」「えっ!?」
高須 「え?」
桐村 「僕は…腕時計」
鳥居 「…指時計」
湯前 「…逆時計」
マスター 「…みんな、駅前の時計市で買ったんだな」
高須 「はははっ。いや、ありがたく使わせてもらうよ」
 ◎ドア開く。
青柳 「とーちゃーっく!」
高須 「おっと」
鳥居 「青柳さん」
蛍原 「こんちはー」
湯前 「蛍原さん」
青柳 「あっれー?もうはじまっちゃってる?」
蛍原 「そりゃ、こんだけ遅れてんだし」
高須 「あれ? 蛍原、京野さんは?」
蛍原 「…おい。なんでオレに聞くんだよ」
高須 「いやいや、知ってるかと思って」
蛍原 「どういう意味だよ。 …京野さんだったら、今日はどっかに買い物行ってるよ」
一同 「ほほ〜う」
蛍原 「なんなんだよ!」
高須 「まあ、百歩ゆずってよしとしよう」
蛍原 「お前ねぇ…」
高須 「あぁ、青柳」
青柳 「なに?」
高須 「…ほら、これ」
 ◎小銭の音。
青柳 「えっ」
高須 「コーヒー代。…いいよな?」
青柳 「…そうだね」
蛍原 「?」
マスター 「じゃ、はじめよっか。ほい」
湯前 「では、高須さんの受験合格を祈って… でいいの?」
桐村 「…なんか変な気もするけど」
高須 「まぁいいさ。こだわることもないし」
湯前 「いくよ? せーのっ」
一同 「かんぱーいっ!」

 ◎缶ビールあける音。
高須 「ふ〜っ。もう夜かぁ」
蛍原 「二次会もあったからな。そー考えるとこれは三次会か」
高須 「まぁとりあえず飲みな。ほら」
蛍原 「へぇ… 珍しいな、お前がビールすすめるなんて」
高須 「なんかね。今日はそんな気分」
蛍原 「ほ〜。 じゃあ、そんな気分のキミに聞こう」
高須 「ん?」
蛍原 「今日、コーヒー代返したときのアレは、何?」
高須 「…そーくるか」
蛍原 「京野さんについてさんざん言ったもんなぁ。聞く権利はあるはずだ」
高須 「…まぁ、いいか。
  あれは二年の時かなぁ。オレと青柳がつきあってるってうわさがたったんだ」
蛍原 「ああ… 有野が言ってたな。 つきあってたのか?」
高須 「ん〜… どうなんだろうな。
  うわさってのは、本当の気持ちまでは伝えてくれないんだよ」

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