純情青春野郎爆進中!

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第十九話 決心へ…
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 ◎コーヒーカップ置く。
狭山 「それで、どうするの二人とも?」
鳥居 「やっぱり、一度帰ろうと思うんです。もう二年近くたつし」
狭山 「桐村くんもそう思ってるの?」
桐村 「…」
狭山 「まだダメなの?」
桐村 「…はい…」
鳥居 「おい、桐村」
狭山 「…どうしてそんなに帰りたくないの?自分の家でしょ?」
桐村 「どうしてって… 家とびだしてきたんだしっ…
  ――なんで鳥居は、帰ろうなんて思えるんだよ!?」
鳥居 「なんでかなぁ…。 オレも、こっちに来たばっかりのころは帰りたくなかったけどさ」
桐村 「…」
狭山 「そういえば… あの喫茶店の人たちに言ったの?」
桐村 「…言いました」

 ◎ドア開く。
湯前 「いらっしゃいませー… あっ」
高須 「やっ。久しぶり」
湯前 「高須さん!」
マスター (少し遠くから)「あぁ、高須くん。久しぶりだね」
高須 「ちょっと近くまで来たもんで。
  そーだなー… じゃあ知賀ちゃん、コーヒーもらえる?」
湯前 「はーいっ。お父さーん、コーヒーひとつー」
マスター (少し遠くから)「あいよーっ」
高須 「ふぅ…。
  …親の反対押し切ったんだってね、桐村くん」
湯前 「あ、聞いたんですね」
高須 「うん、電話で。
  鳥居くんと二人で住んでるのは、そういうわけだったんだね」
マスター (少し遠くから、だんだん近づいて)「何か事情があるとは思ってたけどねぇ。
  はいコーヒー」
高須 「あ、どうも」
湯前 「桐村くんたち、帰っちゃうのかな?」
高須 「どうだろうねぇ…。
  鳥居くんはともかく、桐村君がはっきりしないみたいだったし」

桐村 「もともと、二年前に東京に来た時に、あの人はもういなかったんです」
狭山 「そこで帰ろうとは思わなかったのね?」
桐村 「そこで帰ったら、ただあの人を追って東京に来たってことになるじゃないですか。
  それじゃ、親にも自分にも負けたことになる、と思って」
狭山 「東京の高校に来た理由はそれだけじゃないんでしょ?」
桐村 「はい… でも…」
狭山 「でも?」
桐村 「…それが何なのかは、はっきりしないんです」

マスター 「でも、やっぱり一度は帰った方がいいと思うけどね」
高須 「そうですね。それで、向こうに住むことになっちゃうかもしれないけど…」
湯前 「そんなぁ…」
高須 「親を捨てて生きてくなんてこと、やっぱりやっちゃいけないしね」
湯前 「…向こうに住まないでほしい…」
マスター 「こら、知賀。  …と言いたいところだ、が。
  そう思ってるなら、ちゃんと少年の前で言ってみな」
湯前 「えっ?」
マスター 「思ってるだけじゃだめだ。
  ――ちゃんと、伝えなきゃ」
湯前 「…うん」

狭山 「夏ごろ… だっけ?
  二人とも、自分の家に手紙出したわよね」
鳥居 「はい」
桐村 「それについて、なんて言ってるんですか?親は」
狭山 「んーっとね… ヒミツっ」
桐村・鳥居 「…はざやまさ〜ん…」
狭山 「ここであたしが言ったら仕方ないじゃない。
  直接会ってみなきゃね〜」
桐村 「も〜っ…」
狭山 「さて、そろそろお昼だし、何かつくるわね」
鳥居 「あ、すいません」
桐村 「あ、狭山さん!」
狭山 「ん?なに?」
桐村 「…みそ汁、つくらせて下さい」
鳥居 「なにっ!?」
狭山 「いいわよ」
鳥居 「おい桐村っ…!」
桐村 「ふふふ… まかしとけよ」
鳥居 「はっ!?
  なんだあの根拠のない自信は…
  まさかオレの知らないところで料理を勉強してたのか…!?
  もし今度こそ桐村の料理が食べれるものだったら…
  オレがラクできるっ!
  ――よし、まかせよう」

 ◎台所。
狭山 「桐村くん」
桐村 「はい」
狭山 「桐村くんは、お父さんとお母さんをどう思ってる?」
 ◎包丁の音。
桐村 「間違ってると思います。 あ しじみ あります?」
狭山 「ん、そこ。 …どうして?」
桐村 「子供が行きたい高校に行かせようとしないんですから」
狭山 「…なるほどね。 あ、お塩とって… うん、ありがと」
桐村 「親が子供の可能性をつぶしたら、しょうがないじゃないですか。
  すいません なめこを…」
狭山 「はい。
  …たしかに、その考えは間違ってないわ。
  それは、向こうが間違ってるんだと思う。 ――でもね」
桐村 「…でも?」
狭山 「両親をおいて一人で東京に来たってのも、間違ってるんだと思うわ」
桐村 「…」
狭山 「ところで桐村くん… さっきから気になってるんだけど…
  ――豆腐に…しじみに…なめこに…  え゛?」

 ◎茶碗置く。
桐村・鳥居・狭山 「ごちそーさまでしたー」
鳥居 「あ〜… やっぱり狭山さん料理上手いですねー」
狭山 「ありがと〜」
桐村 「鳥居… みそ汁は?」
鳥居 「だしも入ってるし、前回よりうまい。それは認める。
  …あのな。
  具は入れりゃいーってもんじゃないぃ!!
  なんで五種類も入ってんだ おい!」
桐村 「あったから」
鳥居 「なんだそりゃ!」
桐村 「豆腐… しじみ… なめこ… わかめ… さといも…。 以上五品。
  ――だめ?」
鳥居 「だめだっての!」

狭山 「じゃあ、気をつけて帰ってね」
鳥居 「あ、はい。ありがとうございました」
狭山 「桐村くんも、いい?」
桐村 「…はい」

 ◎街ガヤ。
鳥居 「桐村ぁ… お前、あの時言ったよな。
  『こっちじゃなきゃ見つからないものを見つけてみせる』って」
桐村 「あぁ」
鳥居 「…見つかったか?なにか」
桐村 「…たぶん、見つかった。 と思う。」
鳥居 「あ ちょっと待った。 なんか飲むか?」
桐村 「あ うん」
鳥居 「おごるよ」
桐村 「あ 悪いね」
 ◎自販。
鳥居 「ほい」
桐村 「サンキュ」
 ◎プシュ(缶開ける音)。
鳥居 「…で?どうする?」
桐村 「…んー…」
鳥居 「なんだ、まだ悩んでるのか」
 ◎プシュ。
桐村 「…いや…」
鳥居 「ん?」
桐村 「行こうぜ、春休みにでも」

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